遭遇

草木も眠る丑三つ時、というにはちょっと早い時間

俺達は敵方の陣地に奇襲を仕掛ける為に、進軍していた。奴と出くわしたのは、ちょうど敵陣まで半分といった場所。嘗ては立派な城でも立っていたのだろう、今では城壁を残すだけと成り果てた栄光の跡地だった

「さて、会えて光栄だキッド君。君は実に優秀な男だ、昼間の兵の配置を見るに頭も切れる。もちろん粗野で暴力的なところは改める部分ではあるがね。だが、恐らく...いや」

目の前の仮面の初老の男、正確には初老かどうかすら分からないソレはこちらを見る事も無く、続ける

「うむ、世辞を言うのは苦手でね。ハッキリと言わせて貰うとしよう、君...いや君達では私の相手にはならないよ。非常に残念だがね、経験が違うと言われて納得するとは思えないが、まぁ出直してきたまえ」

「...ああ?」

びきびきと、血管が拡張する音が聞こえる...いや実際には聞こえる訳が無いのだが、そう思ってしまう程のビリビリとした空気がビリー・ザ・キッドを包んでいる

「確かに主はファッキンなクソ野郎だが、それを抜いても俺がお前に、劣っているってのは聞き捨てならねぇなぁ、ああ!?」

リボルバーを向けて半ば叫ぶ様に言い放つ、心底納得がいかないとその行動が語っていた

(おい、ちょっと待て、相手が何の偉人かも分かっていない、しかもこっちの身元が割れてるってのに軽率すぎるだろ!って...あ...キッドの奴、話聞いてないな?無視するつもりだな?)

偉人を顕現出来る人間は顕現させた偉人からは主と呼ばれる、一言で主と言っても色々だ。そもそも偉人にも意思がある。偉人と主のお互いが認め合い信用を獲得しなければ顕現した偉人は思ったように力を発揮出来ない、それは文字通り力、攻撃に関するモノだったり、計略や知識だったりもする。

主との関係性が破綻したまま'この戦い'に身を投じて、投じさせられて実力を発揮出来ないまま倒れる偉人も多いらしい、らしいって言うのはこの情報が怪しい連中から与えられたモノって言う事と、自分が出会った偉人が今目の前にいる男で一人目、自分が顕現しているビリー・ザ・キッドを含めて二人目という圧倒的な経験不足によるものだ

(自分が半人前だって事くらいは自覚しているけど...ちょっとくらいは気を使ってくれてもいいじゃないか)

この声も恐らく届いてはいるのだろうが、期待は出来ない。なんせコイツと出会ったのはつい最近、しかもなし崩し的になのだから

「どうかしたかね?」

「あ、ああ、ちょっとな」

「ふむ」

男は一拍置き、得心が言ったかのように声を漏らす

「ふむ、君も主には苦労する口かね」

何が可笑しいのか、くっくっくと、仮面の男が笑い、かくいう私もでねと付け加える

「だがね...それはそれとして、どうするのだね、私としては意思を変えるつもりはないがね、そもそも、戦争はまだ始まったばかりだ、君達もここでリタイアするのはツマランだろう?」

戦い、戦争...この男はBoardBreakWarの事を言っている。これに関しても情報が少ない。事実、自分を巻き込んだ連中の言い分も「この戦いを生き残ったら願いを叶えてやる」という一言の不躾なものだった。

(巻き込んだ…うん、まぁ、自分から飛び込んだと言う方が正しい気もするなぁ。あの銃を手に入れた時から、どっちにしろこうなっていただろうし…)

兎にも角にも、この状況を脱しなければ

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