運命の選択者
「あぁ、なんて事でしょう」
深遠に染まりつつある月夜の晩、湖の辺に2つの影が浮かび上がっていた。そこには月の美しさにも負けぬ美貌を携えた彼女―カテリーナの姿があった
「くそ、何で当たらねぇーんだ!?どうなっていやがる...」
ソレは、彼女とは対照的に獰猛且つ勇猛、まるでライオンの様な男だった
共通している点と言えば、お互いが互いに敵と見なしている、と言う事だけだろうか
「何故、貴方は私を狙うのですかっ、私は兵士の方々に運命を伝えただけですのに...」
「運命を伝えただけだぁ!?言いやがるぜ、俺の仲間を2人殺した奴の台詞とは思えねぇなぁっ!」
ヘクトールの剣が空を切る、確かにカテリーナを捕らえていたはずにも関わらずだ
「さっきからどんな魔術を使っていやがるんだ」
「嫌ですわ、魔術だ何て...そんな野蛮なモノと一緒にされては」
ふふ、と月を背景に微笑む姿はこの世の者とは思えぬ妖艶さを醸し出すが、それも束の間
(...ぐっ...なんだ...と)
嫌な痛みが走り、視線を自らの腹部へと向ける。そこには短剣が背中から腹部にかけて突き立てられ、先端が煌いていた
「いい子ね」
ヘクトールを刺したのは、嘗ての同胞、部下、仲間、いや...薄れ行く意識の中、その兵士の顔を見るが、どれとも違う、恐らくカテリーナの兵隊だろう。これが走馬灯と言うやつだろうか
(ここまで...か)
カテリーナは崩れ行くヘクトールを一目見て
「私はシエナのカタリナ。運命にあがらう事など何人たりとも出来はしない...のですわ」
(涙...?何でお前が泣く...)
ここでヘクトールの意識は途絶えた。